その公設市場の裏路地に「盛岡」という小さな小料理屋がありました。
ご主人の名前から通称「しんちゃん」と呼ばれていたその小料理屋は、
天ぷらや魚料理がおいしくて、常連客が多く繁盛していました。
さて、その「しんちゃん」で特筆すべきは、
料理とつけタレの絶妙な組み合わせでした。
醤油やぽん酢にわさびや赤おろし、生姜やゆずごしょう等、
素材にぴったりのつけタレが変幻自在に出てきました。
そしてそのぽん酢は「しんちゃん」が調合したものでどんな素材も生かす、
くせのないぽん酢でした。淡白な白身魚から、くせのある海茸やあんきも、
くじらのワタまで、色々な薬味と合わせたタレで、
最高においしく食べさせてくれました。
ぽん酢に使われる柑橘類は、ゆず、かぼす、すだち等色々ありますが、
その中で「しんちゃん」が選んだ究極の柑橘類が「だいだい」だったのです。
だいだい酢は地味ながら柔らかい風味で素材を活かし、
薬味と融合してまた素材を生かす、貴重な個性を持っていました。
残念ながら、それから十数年後に「盛岡」はなくなりましたが、
どうしてもそのぽん酢が忘れられず、
「しんちゃん」の味を再現すべくつくったのが、
だいだい酢を使った「わた惣ぽん酢惣兵衛」です。
淡白なふくや、白身魚の酒蒸しからくせのある魚介類まで、
わさび、赤おろし、生姜、ゆずごしょう等、
色々な薬味を溶かしてお試しください。
きっと皆様の満足するタレが見つかるはずです。
(専務 駒山 徳男 )
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